ようやく全話観終えたが、いやはや。蜀の衰退から観るのが若干しんどくなったところはあるにせよ、終盤盛り返してきちんと見所をつくって楽しめるようになってる。全体を通して一貫してるのは「不条理」かな。
三国志のエンディングとか特に魅せる要素もほぼない中、普通の演出家だと淡々と説明的な進行になりそうなところが、司馬懿の妻の末路と司馬懿との関係性が明かされていったりと、間延びさせないためのギミックが張ってあって楽しめる。
司馬懿が玉座に何の躊躇もなく座ったり彼の妻に対する行為には観る者の度肝を抜く驚きを与える一方で、彼を慕う部下、彼が長年受けた不遇を考えると、納得できるものがあるし、孔明に兵糧の火計で万事休すになった時は、本当に彼がこのまま死ぬのだろうかと観る者に思わせることに成功している。それは、司馬懿がそれまで曹家にどれだけの仕打ちを受けてきたか、彼がどれほど献身的にその才能を捧げてきたかをきちんと描いているからで、それをシリーズ物の各話の中に布石として予め埋め込んでいくとなると、最初の脚本の設計段階で固められていなければならず、よく作り込んだなという印象。
単調になってしまいがちな三国志という既存のストーリーテリングに「えっ?!」と思わせる要素を散りばめて退屈させない演出は優れていると言わざるを得ない。観て良かった。