赤壁の戦いの決戦前、18歳の孫権が応戦を決意し張昭を総体調官に任じる際、和睦を推していた最年長であろう彼の体裁を保ちながら、組織全体を一致団結させる話し方は見事。性格、立場の違いによる考え方、答えの導き方や方法論の不一致による不和を、統率する者が「恐怖」ではなく「理解」によって解消させている。「士は己を知る者の為に死す」正にこれ。そこは、その回の華になるシーンなんだけど、ピンと来ない人には全く分からないはず。聡明なのは周瑜や孔明だけではない。あの一連の数話でワンショットで顔をアップで抜かれている人物ほぼ全員自分達の持てる知恵全てを投げ売って勝負しててそれが何とも健気で美しい。しかし、全体として物語の骨組みがしっかりしている為か、その素晴らしさを見落としていてもそれとなく観れる仕上がりになっている。
曹操「敗北は兵家の常。失敗を恐れるのではなく、心の敗北を恐れよ」こういうセリフがさらっと流れていくのよね。別の回では、曹操の街に触れ回した檄文を見た登場人物が「曹操は兵ではなく先ず心を挫きに来る」というような事を言う。こういう教訓や知恵を強調せず、少し注意していないと記憶に留まらない程度にしてそっと忍ばせてる。
どういう人間が生き残るのか、また、表舞台の覇者というのは何なのかを考える材料として提示してくれてる。
欠点としては、役者の演技がくさすぎる時があるんだけど、脚本がここまでしっかり作れてれば、アバタもエクボ。愛着に変わる。